曇った寒い木曜日
台所からいい香りがします。そして焼きたてのするめ。「なんていい香りなんだ!」と我が輩が叫び、スコッチのソーダ割りを自分に、愛する内儀にはIWハーパーのソーダ割りをつくっていたまさにその頃、内儀は台所でマヨネーズと醤油をあえていました。そして結果はいつものとおり、匂いを嗅ぎ付けてやってきたこどもたちの手でするめはあっというまに地上から消滅しました。
ただしウィスキーのソーダ割りを除いて。
それから1分後、我が輩は再びこう叫びました。
「なんてぱりぱりのタクアンなんだ!」
そう。そのタクアンは光沢といい歯触りといい色といい、ほとんど完璧に近いものでした。
それから10分後、我が輩は炊きたてのごはんと、自家製味噌でつくったわかめのみそ汁と、そしてほくほくのぶり煮に刻みしょうががこんもりと盛られた料理を前に、再び叫びました。
「なんて完璧なぶり煮なんだ!そして今夜の夕食に乾杯!料理上手なママに乾杯!」
というのも、我が輩はちかごろ、「白い国籍のスパイ」という小説を読んでいるので、こんな文体になってしまうのです。その小説は、亡き開高健が「トイレに行くのも惜しい」と評した小説で、主人公は危機的状況に陥るたびに、すばらしい料理をつくって状況を打開するという本です。
おすすめ。
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