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イポーニツによるウォッカ批評 第10回 日本対フィンランド

記念すべき第10回は日本対フィンランド。両者の共通点は、ロシアと隣同士であること。フィンランドは西、日本は東。それから、フィン語と日本語は語順つまり文法が同じであること。フィンランドのフィンはフン族(=匈奴)という説もあって、要するにテュルク語の西の端と東の端。人口規模は倍くらい違うけれど、条件としてはほぼ対等。違いとしては、日本はロシアに勝ったことがあるけれど、フィンランドは勝ったことがない。日本もめっちゃ勝ったわけじゃないけどね。 いまのところ、フィンランディアがいちばんスムーズなウォッカである。税込の値段はフィンランディアが1600円くらい、ニッカが900円くらい。値段がぜんぜん違うので、比較は酷かもしれないが、ベンチマークをフィンランディアに決めたので仕方がない。 飲み比べると、あれれ?そんなに違いがあるのかな?ニッカはドライだけどピリピリするわけではない。フィンランディアはマイルドだけど、逆に、そのまろやかさがスカイ臭い(=糖蜜系な)のかな?と思ったりする。 しかしここでフィンランディアとスカイを飲み比べはじめると、アル中の泥ヘドロにハマりそうだ。やめておこう。 ひょっとして、いろんなブランドを手当たり次第に飲んでいるうちに、ウォッカの評価の閾値がめっちゃ広がってしまったのかもしれない。たまには3000円くらいのクラフトウォッカを飲んでリセットせなあかんのかなぁ。でも3000円出すならスコッチ買うよな。

モカマタリ焼酎 第2日め

濃さが倍くらいになってる。時間が2倍になったので当然か。キナリで飲むと、コーヒーの香りがたいへんディープだ。冷蔵庫にあった牛乳で割ると、甘くないカールア・ミルクのできあがり。 映画「ビッグ・リボウスキー」では、ジェフ・ブリッジズ演じるデュードが、家に帰るなりグラスにカールアとウォッカをどぼどぼ注ぎ、ミルクを足してカールア・ミルク・スペシャルを作って飲むんだ。いいなあ、と思ってそれをやってみると、大変なことになる。 糖分と脂肪分とアルコール、人間にとって3大悪徳コンボに依存症になりそう。やめられなくって何日か過ぎると、自分がデブになっているのがはっきりとわかる。 だから、それをどうしてもやりたかったら、モカマタリ焼酎を作るべし。

モカ・マタリ焼酎

「素晴らしきウォッカの世界」に紹介されていたので、真似してみた。 https://www.ienomistyle.com/sakeguide/20200528-3996 ただしウォッカでなく、宝焼酎「純」35度で。 1日め。コーヒーの甘さが先に来て、アルコールがあとでガツンとくる。モカ・マタリはふつうに淹れたら、酸味がちょっと強めの豆だが、コーヒー焼酎では酸味を全然感じない。 コーヒー焼酎。悪くはないけど、何杯も飲む酒ではない。 さて、2日めはどうなるかな?

ほとんど養命酒

ほとんど養命酒だが、養命酒のねっとりした甘さはない。ズブロッカのバイソンオークである。 ウォッカ批評に入れるには、ウォッカから遠すぎる。日本ウォッカ協会によると、ウォッカは蒸留し、フィルタリングする・・・という「マイナス系の酒」だそうな。だとすれば、ズブロッカでウォッカと言っていいのは草抜きのやつだけである。とはいえ、日本ウォッカ協会の会長はズブロッカのペッパー入りを飲んでいるようだ。単なる酒飲みだな、きっと。

イポーニツによるウォッカ批評 第9回 ロシア対フィンランド

天然ガスは例外扱いなのに、同じエネルギーながらウォッカは禁輸対象。納得いかないが、石油やら天然ガスやら漁業資源交渉を制裁対象外にするなど、アメリカ犬の尻尾の糞どもの方針に逆らって、粛々と仕事をしている有能な官僚のおかげである。ウォッカくらいで「G7として制裁してまっせ!」という面子が立つのなら、まあしょうがない。 世間の風に逆らって奔走しているのは、官僚だけではない。甲斐国の戸田酒販もそうである。輸入禁止のロシアン・スタンダードをどっかから1ダース仕入れ、そのうち6本を我輩のために取置きしておいてくれた。感謝である。 何年か前のこと。戸田酒販は、茅野のダイヤ菊を買収した。ダイヤ菊は経営が宮坂家から戸田家に変わったけれど、作りかたも味もちゃんと継承されているようだ。茅野の「月とスッポン」で、ふたたびダイヤ菊の吟醸生しぼり酒(名前はあやふや)を賞味した内儀によると、以前も今もおんなじように「おいしかった」とのこと。うらやましい。この種類はどうやら、ある種の飲食店にしか出していない。どこの酒屋にも売ってないんだ。飲食店と共存共栄する戦略かもしれない。あそこの店でしか飲めない酒、となったらその店に行くよね。 6本もいっぺんに買ったのは、プレミアムがつくかもしらんというすけべー心ではない。ロシア人への賄賂にするのだ。今後ともいろいろ便宜を図ってもらうかもしれないから。余談ながら、パキスタン人への賄賂も、たいていウォッカだった。 閑話休題。飲み比べである。まずフィンランディアを啜る。まろやかに、スムーズに喉に落ちて横に広がる。それからロシアン・スタンダード。うむ。 なんというか、ストレートである。スムーズなのに、喉全体にまんべんなくどぉーんと広がる。全体が熱くなってから昇華する。 「俺はいまウォッカを飲んでるぜ」という感じ・・・といえばいいのかなあ。 不思議なことが起こった。ロシアン・スタンダードを飲んだあと、フィンランド、ポーランド、ラトヴィアなどいろいろ啜ってみたが、ぜんぶおんなじような味にしか感じない。味覚がなくなったわけではない。スカイみたいに、原材料に糖蜜を使っているやつは、ねっとりした甘さをちゃんと感じる。 穀類からまっとうに作ったウォッカなら、ロシアン・スタンダードは、みんなをトモダチにしてしまう。

イポーニツによるウォッカ批評 第8回 ラトヴィア対アメリカ

比較対象としてモルドバも入ってます。でも実質的にはラトヴィア対アメリカ。 ラトヴィアで思い出すのは、我がオールドフレンドのオルガ・ゼルジタス。オールドフレンドというのは、歳とった友達というのと、古い友達という二つの意味がある。オルガの場合は両方。 オルガ・ゼルジタスは1987年ごろに80歳か、その手前で亡くなったから、おそらく1910年頃の生まれ。家に遊びに行くと、紅茶を入れてくれたり、クッキーを出してくれた。それからゆっくりと、故郷のラトヴィアのリガの写真を見せてくれて、昔話がはじまる。ラトヴィアにナチスが入ってきた時のこと、ナチスが出ていってソヴィエトの赤軍が入ってきた時のこと。赤軍が入ってきたのは1945年だから、オルガは30代だった。 「法律家になってはいけません。国がなくなると、法律もなくなるから。」故郷で弁護士だったオルガはそう言った。欧州6ヶ国語ができたオルガだけれど、英語だけはできなかった。だからアメリカに亡命して、家政婦をするなど苦労して、一人息子のレオナルドを育てた。 なんでオルガの家に行くようになったかというと、下宿人のキャシー・ブルーノの趣味が、独居老人訪問だったから。独居老人を訪問すると、お茶とクッキーを出してくれて、エンドレスの話が始まる。ときには歯の抜けた口で。これが英語の聞き取りに最高の訓練になる。 そんなオルガの生まれ故郷、ラトヴィアのストリチナヤちゃん。嚥下するときに、口腔の奥全体にアルコールが広がる。それはアメリカ産のピナクルも同じ。だけれど、ストリチナヤちゃんのほうが上品。モルドバのペトロフスカヤちゃんと比べると、アルコールがどどーんと押し寄せてくる感じは否めない。 たまにストリチナヤを飲んで、オルガのことを偲ぶのも悪くない。物静かで穏やかだったオルガ。壮絶だった半生を語るときも穏やかだったオルガ。ハドソン川が一望できるヨーロッパ風のコンドミニアムは、クラシックで重厚な家具調度で揃えられていた。 そして、彼女に会わせてくれたキャシー・ブルーののことも思い出す。

イポーニツによるウォッカ批評 第7回 ポーランド対ポーランド

ポーランドのアブソルヴェントとズブロッカ(草抜き)の対決です。 ポーランドっていうのは、NATOでいちばんヤンチャなことを言う、いわば困った国。だが、なんとなく憎めない。それにはいくつか理由があって、ひとつは自分らの国が何度かなくなってしまったから。世界史でいうポーランド分割というやつで、近隣の国がよってたかって自分の国をむしり取ってしまった。こんな気の毒なことはない。だから、近隣の国に対する憎悪とか恐怖はわれわれ日本人の想像が及ばぬところにありそうだ。 もうひとつの理由は、個人的なこと。1984年1月、ニューヨークに着いたばかりの我輩は、先輩のオーマイさんと同じ下宿に放りこまれた。そこの家主がサーディ・スパコヴィッチというポーランド系のおばあちゃん。さらに仕事相手が、ニュージャージーの港湾地帯にある海貨業者とか運送屋とか倉庫屋。海貨業者はドイツ系、倉庫関係はポーランド系がなんでか多かった。仕事で付き合いが濃かったのは、ジミー・モカウスキーというポーランド系の兄ちゃん。アメリカ生まれで、ポーランドの歴史なんて我輩のほうが詳しいくらいだったけど、いいやつだった。つまり、ポーランド系で悪いやつに会ったことがないんだ。 閑話休題。ウォッカの飲み比べ。両者ともスムーズ。飲んだあと甘みを感じるアブソルヴェントは、副鼻腔のみならず喉全体に広がる。ズブロッカも甘みを感じるけれど、微妙に違う。香りが垂直に、副鼻腔に抜けるのと、甘みも垂直に感じる。 同じポーランド産だけに、材料が似ているんだろうな。あとは好み。ちなみに単価はアブソルヴェントが格段に安い。ドンキでしかみたことがない。